チャラリラリラリラララリララー
「あ電話・・・ちょっとごめんね」
ピッ
[もしもし、あ、ごめん今うん、じゃね。]


チャラリラリラリラララリララー
「もうしつこいなー本当ごめん。」

ピッ 
[もしもし ・・・え・・・はい・・・はい・・・分かりました。
今すぐ行きます・・・はい・・すいません・・。]



何かがおかしい・・

電話を切ったあとは不自然な笑顔で
「ちょっと用事ができた」といって出て行こうとした。
声は震えてた。おかしいと思った。とうぜん俺は止めた。
の不自然な表情と震えた声のことの方がすごく気になった。


いつもと何かが違った。
あいつの笑顔に違和感を感じたのは初めてだった。
手を引っ張ると、は泣いていた。
何で泣いているのか、どこへに行こうとしているのか。
俺はの全部を知っているつもりだった。
こんな不自然な笑顔,泣き顔,震えた声なんて知らなかった。
はいつでも笑ってて一度も人前で泣いた事がなかった。
俺も6年も一緒なのに全然そんなことにも気付かなかった。



俺は思った。いや、確信した。
本当はつらい時 我慢して一人で泣いてたんじゃないか。
六年も見てきて分かってやれなかったのが情けなくて仕方がない。
この時、あいつを守ってやりたい。本気でそう思った。




「何があったんだ?」
「・・・・・」
「俺はどうすればいい?」

俺なんかにが聞いていい事なんだろうか・・・
俺が全部受け止められる・・事なんだろうか・・・

「・・お,・・・・お母さんが・・・・」
「・・・・お母さんの病気が悪化したって・・・・ッヒク・・」
「・・・何でそんな大事な事先にいわねぇんだよ!!」
「だって・・もう無理だよ・・」
「無理じゃねぇよ!!!!お母さんは頑張ってるのに
           お前が泣いててどーすんだよ?」


「・・・・・・グズッ」
「おい!!!早く行くぞ!!!」
「・・・・・」


景吾が私の腕をつかんで引っ張る。景吾の背中が見える。
凄く広くて暖かい。そんな背中に見えた。



走って病院へ向かった。
手術中のところに赤いランプがついている。
様子からするとまだ手術中らしい。
俺はもしの母が死んでしまったら・・。
と考えるとぞっとした。
は生きていけるんだろうか?
いや、もし生きていたとしても・・・
笑顔さえ失ってしまう様な気がしてならなかった。

でも俺は、今のあいつに声を掛けてやる事さえできなかった。

大丈夫?・・大丈夫なわけねぇ。
元気出せ?なんて言っても・・出るわけねぇ。
お母さんは絶対助かる。何て保障がない事言えるわけもねぇ。

何も言えないままただ頭を撫でてやる。そんな俺は誰よりも無力だった。
守ってやるなんて言っても今回は結局何をする事も出来ねぇ。

「!!!」
「・・・・ゆ・・うし?」
「大丈夫か?」
「・・・う・・・うん・・」
「景吾・・容態どうなってん?」
「・・・まだわかんねぇ」
「・・・・そっか」


場違いだとは分かってるが。
あいつの好きなやつが侑士だって事・・
何で分かったかを今教えてやるよ。聞きたいか?
俺は6年前からの事が好きだったんだよ。
ずっとあいつの事を見てたから・・・・。
ずっと俺の頭のなかでは否定し続けたこと。
もう無理だってわかった。あいつには降参だ。



・・その時パッと,手術中のランプだ消えた
手術が終わったみたいだ。医者が中からでてきた。
待合室は当然静まりかえった。

そのとき、医者が口を開いた。

「・・手術は成功しました。
ですが1週間以内で目が覚める事がなければ・・・
きつい事を言う様ですが・・もう無理でしょう・・。」












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